インフルエンサーのP2C
これまで、タレントや映画スター等のインフルエンサーは、企業の広告塔としてCM出演やスポンサー契約等で収入を得るのが王道でした。
しかし、近年は、P2C(パーソン・トゥ・コンシューマー)という仕組みでのビジネスが盛んになってきました。
インフルエンサーが、エンド顧客に直接販売するという仕組みです。
数年前から、アメリカでは、多くのインフルエンサーが、自身が会社の株式を持つオーナーになり、自分のデザイン・考案した商品をブランディングし、代理店などを通さず、自身の発信力を使って、直接ネットで販売する、ということが盛んになっています。
強いインフルエンサーは売上も莫大で、1,000億円/年を超える売上がある人もいます。
そういったインフルエンサーの会社は株式価値も膨張し、莫大な資産を築き上げました。
このように成功した人は、企業のからの広告費で稼ぐより何十倍~何百倍も儲かったりしているようです。
P2Cのメリット・デメリット
いい事だらけのオイシイビジネスに思えますが、デメリットもあります。
簡単ですが、メリット・デメリットの両方を書き出してみました。
P2Cのメリット:
- スポンサーに依存しなくてよくなる。
- 予約販売することにより在庫ロスを極限まで減らすことができる。
- 広告費がほぼ0。(自身のSNS等で発信)
- メインとなる販売顧客は自分のファンであるので、付加価値を感じてもらいやすい。
- ファンは、インフルエンサーの商品説明をちゃんと聞くので、商品を理解して、継続して買ってもらいやすい。
- 応援の為に買うような濃いファンも一定数いるので、販売予測がしやすい。
- ビジネスが上手くいったら、その事業主体となる株式価値の増大が見込まれる。
P2Cのデメリット:
- 事業会社の経営に深く携わることになるため、本業の活動に支障がありえる。
- インフルエンサー個人の健康状態、言動、人気等に極端に依存する。
- その事業のイメージが個人のイメージとなるので、事業の失敗が影響力の低下に繋がる恐れがある。
- タレント活動自体だけでも精神的・肉体的負担は大きと思われるが、事業会社の責任を負うことによりストレスが増える。
こう見ると、インフルエンサーなら儲かるからやるべきだ、とは言えないかもしれません。
でも、有名人にとって、マネタイズの選択肢が増えたことは確かでしょう。
日本のP2Cビジネス
ここ数年、日本でもインフルエンサー(有名人)による自社ダイレクト販売事業が盛んになってきました。
有名なのが、Youtuberヒカル氏によるアパレルブランドECビジネスです。(実店舗展開する脱毛サロンもある。化粧品も始めたようです。)
格闘家の朝倉未来もYoutube活動をしながらアパレルブランドEC事業をしており、成功しているようです。
彼らに共通しているのは、最小のスタッフで、生産から販売実務の大部分を外注(提携)し、予約販売制で在庫を最小限にし、自社店舗はなくECのみで、広告は主に自身のSNSで行っている、ということでしょう。(すべてかどうかは不明)
ブランドの主体となる事業会社の権利は自身で持っていると思われます。
焼肉屋『牛宮城』
前述のヒカル氏とお笑い芸人でYoutuberの宮迫氏が焼肉屋を共同出資でオープンするようです。
その様子は、彼らのYoutubeで確認できます。
動画の中で、試食会をする様子やオープンが延期になってしまったことなどの説明がされています。
肉の質が悪い、保存状態が悪い、盛り付けが下手、食器がしょぼい、おしぼりがちゃちい、、、等と、ヒカル氏が自分達の店に駄目だしする姿があります。
宮迫氏は困った様子でした。
チーム宮迫が食を担当し、キッチンを管理する人を決め、任せていたからでしょう。
そもそもが違う
ヒカル氏が成功したアパレル、化粧品、脱毛等のビジネスは、提携相手やパートナーやメイン仕入先がその仕事の専門会社だったのです。(ロコンドやサティス製薬)
当然です、わざわざ素人と組むはずはありません。
今回のヒカル氏のパートナーは宮迫氏です。
もちろん、焼肉屋などしたことはありません。
仮に共同出資するなら、焼肉屋営業会社とすべきです。(叙々苑や牛牛?)
それは宮迫氏にも言えることです。
組む相手はヒカル氏ではありません、焼肉屋と、です。
インフルエンサー同士組んでも実務管理はできません。
今回のケース、株主は宮迫氏とヒカル氏。
で、焼肉屋を経営するのは雇われ店長(従業員)ということになります。
上手くいくのでしょうか。
その従業員がスキルがあり熱狂的なファン?なら上手くいくのでしょうか。
このままでは、お客は殺到しそうですが、運営はボロボロなんてことになりそうですね。
運営さえ上手くいけば
ヒカル氏、宮迫氏のファン数はものすごいです。
それぞれYouTubeの登録者は450万人、140万人を超えています。
お店は80席なので、1日2.5回転ぐらいで、200人捌くのがマックスでしょう。
その場合、1ヶ月間に来店可能な人数は6,000人、半年間で36,000人です。
前記のような登録者の1%が予約したら、1年近く予約いっぱいになりそうです。
運が悪ければ、永遠に行けません。
食べログでは予算6,000~7,999円となっていました。
客単価を約7,000円とし、6,000人捌くと想定すると、1ヶ月の売上は4,200万円です。
粗利率60%(原価率40%)の場合、2,520万円の粗利です。
そこから家賃、人件費、光熱費その他等を引くと、税引前1,500万円ぐらいの利益になるのではないかと予想します。
こんな収益のお店が10店、20店と増えていけば、スゴいですね。
運営さえ上手くいけば、、、です。
『牛宮城』へ勝手な提案
彼ら2人は、たかだか1店舗、50%の持ち分の焼肉屋の経営に時間を割いていられないでしょう。
運営はモチベーションがあり経験・継続性がある会社に丸投げすべきです。
今後、多店舗展開するなら尚更です。
雇われ店長が多店舗展開任されてうまくいったなんて話、聞いたことありません。
私が考える解決策は下記3つ。
- 2人のどちらかが出資をやめ、専門会社と組んで、運営を任せる。
- 2人の出資分を減らし、その部分に、専門会社に出資してもらい、運営を任せる。
- やめる。(引き継いで焼肉屋をやる人を見つけ、居抜き部分を叩き売る。)
最後に。
2人の影響力をもっと有効活用できる業種に投資したほうがいいと思いました。
今現在苦しい生産工場や農家の販売ルート開拓会社とか。
ただでさえ供給過剰で、零細ビジネスの多いレストラン業界のパイを取りに行かなくてもいいのでは?と感じたのは私だけでしょうか。